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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
そこへひょっくり小林が年上の妻をつれて帰ったので、みんなは驚きもし喜びもした。そして小林のためにできるだけの便宜を計ってくれた。
前にも言ったように村の名は忘れたが、そこは小袖という部落であった。氏族社会のような縁続きから成る十四、五軒の小さな静かな部落だった。私達がその部落に帰ったとき、そこには私達の住むべき家がなかった。そこで、みんながいろいろと相談の上、小林の嫂の実家の西にある薪小屋を片づけて私達の住家としてくれた。
何しろ薪や藁をどさくさと積み込んであったので、床板は腐り、壁は落ち、雨はもり、ちょっと手もつけられないほどだったが、でもともかく古板を打ちつけたり、泥を捏ねて壁を塗ったり、藁をおし込んだりしたので、どうやら寝起きぐらいはできるようになった。部屋は十畳の四角な板の間であって、奥の方に古畳二枚を敷いたきりだった。つまりその二畳が私達の寝間であり居間であり食堂であった。炉は入口に近い板の間に切ったが、もともと田舎の薪小屋のことなので戸もなければ閾もなかった。夏の夜はその入口に筵を吊って戸代りにしたが、冬はさすがに余りに寒いので他家から戸板を二枚貰って来て入口に押しつけて縄で縛りつけた。