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よっつのみやこ
四つの都
織田 作之助
「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页
誰かを探しているらしい。
運動会の係の先生がメガホンで、叫び廻る。
係の先生のA「ふるって御出場願います、選手の人員が不足していますから」
そして、庄平を見て、
係の先生のA「あなた一つ出てくれませんか」
庄平(驚いて)「いや、僕は人を訪ねて来たんで……」
係の先生のA「男らしく出て下さい、躊躇なさるほどの……尻込みなさるのは卑怯ですよ」
庄平(決然として)「僕は何事にも躊躇しません」
前へ出る。
係の先生のA「出てくれますか、有難う」
係の先生、庄平を出発点へ連れて行く。
出発線では七人の選手が待機している。
それ/″\巻脚絆をつけている。
庄平(係の先生に)「済みませんが、脚絆を貸してくれませんか」
係の先生のA「よござんす」
早速、巻脚絆を持って来る。その間に、庄平は上衣を脱いでいる。
庄平「有難う」
巻脚絆を受け取って、素早く器用に巻きはじめる。
係の先生のB「こゝから高津神社まで、往復です」
庄平(うっかりと)「何秒で走れます?」
係の先生のB「何秒ってマラソンはありませんよ、半時間で行けたら早い方です」
八人の選手は出発線へ並ぶ。
七人の者は、見知らぬ顔の庄平の飛び入りに、何かおそれを成しているようである。