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だいうちゅうえんせいたい
大宇宙遠征隊
海野 十三
「国民五年生」1941(昭和16)年4月号~(終号未詳)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,967 字 · 109 页
だから、今は、機械をうごかして、この艇内には、人口重力が加えてあるのさ」
「人口重力て、なんですか」
「人口重力というのは、人間の手でこしらえたにせの重力のことさ。そうでもしないと、たとえばこの食卓のうえに味噌汁のはいった椀がおいてあったとして、お椀をこういう工合に、手にとって口のところへ持ってくるんだ。すると、お椀ばかりが口のところへ来て、味噌汁の方は、食卓のうえに、そのまま残っているようなことがおこるんだ」
「えっ、なんですって」
三郎には、鳥原のいうことが、すぐにはのみこめなかった。なにしろ、あまり意外なことだったので、
「あまりへんな話だから、分らないのも無理はないよ。その話は、この前、僕が宇宙旅行をしたときに、実際あったことなのさ。そのとき僕はずいぶん面くらったよ。なにしろ、口のそばへもってきたお椀は空なのさ。そして味噌汁が、食卓のうえに、まるで雲のようにかかっているのさ」
「雲のようにかかっているとは、どんなことかなあ」
「雲のようにというのが、分らないのかね。つまり、よく富士山に雲がかかっているだろう。あれと同じことで、味噌汁が、下へこぼれ落ちもせず、まるでやわらかい餅が宙にかかっているような恰好で、卓上の上をふわふわうごいているんだ。