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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页
なり。さりながら、こは独り男子の罪のみに非ず、婦人の卑屈なる依頼心、また最も与りて悪風習の因となれるなるべし。彼らは常にその良人に見捨てられては、忽ち路頭に迷わんとの鬼胎を懐き、何でも噛り付きて離れまじとは勉むるなり。故にその愛は良人に非ずして、我が身にあり、我が身の饑渇を恐るるにあり、浅ましいかな彼らの愛や、男子の狼藉に遭いて、黙従の外なきはかえすがえすも口惜しからずや。思うに夫婦は両者相愛の情一致して、ここに始めて成立すべき関係なるが故に、人と人との手にて結び合わせたる形式の結婚は妾の首肯する能わざる所、されば妾の福田と結婚の約を結ぶや、翌日より衣食の途なきを知らざるに非ざりしかど、結婚の要求は相愛にありて、衣服に非ざることもまた知れり、衣服の顧みるに足らざることもまた知れり、常識なき痴情に溺れたりという莫れ、妾が良人の深厚なる愛は、かつて少しも衰えざりし、彼は妾と同棲せるがために数万の財を棄つること、あたかも敝履の如くなりき。結婚の一条件たりし洋行の事は、夫婦の一日も忘れざる所なりしも、調金の道いまだ成らざるに、妾は尋常ならぬ身となり、事皆志と差いて、貧しき内に男子を挙げ、名を哲郎とは命じぬ。