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わらわのはんせいがい

妾の半生涯

福田 英子

「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页

青空文庫

算術を教え給え、算用数字は如何に書くにやなど、暇さえあればその事の外に余念もなく、ある時は運動がてら、水撒なども気散じなるべしとて、自ら水を荷い来りて、切に運動を勧めしこともありき。彼女は西京の生れにて、相当の家に成長せしかど、如何なる因縁にや、女性にして数芸者狂いをなし、その望みを達せんとて、数万の金を盗みし酬いは忽ちここに憂き年月を送る身となりつ。当時は今日の刑法と異なり、盗みし金の高によりて刑期に長短を付けし時なりければ、彼は単の窃盗にしてしかも終身刑を受けけるなり。その才物なるは一目瞭然たることにて、実に目より鼻へ抜ける人とはかかる人をやいうならん、惜しい哉、人道以外に堕落して、同じく人倫破壊者の一人なりしよし聞きし時は、妾も覚えず慄然たりしが、さりながら、素と鋭敏の性なりければ、能く獄則を遵守して勤勉怠らざりし功により、数等を減刑せられ、無事出獄して、大いに悔悟する処あり、遂に円頂黒衣に赤心を表わし、一、二度は妾が東京の寓所にも来りし事あり、また演劇にも「島津政懺悔録」と題して仕組まれ、自ら舞台に現われしこともありしが、その後は如何になりけん、消息を聞かず。