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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

たいそう意気ごんで、花世はこう断言した。

「でもそれには、あなたが乙女のいうことを聞いて、いけないということを決してなさらなければ、だけれど」

「――たとえば」

「ひと口には云えないわ、此処にもいろいろと、そうね、……いろいろと、そのことに触れたり、見たり聞いたりしてはいけない、場所や出来ごとがあるの、たとえば今日は四月十一日でしょ」

「――だと思いますね」

「これもその一つだけれど、今日は誰も山道へ出たり、そこらを歩きまわったりしてはいけないの、どんなことがあってもよ」

こう云って、花世はおとなびた顔で、警告を与えるような、手まねをした。

「あなたも自分の居どころにいて、どんな物音が聞えても、なにか見えるような気がしても、そこを動かないで、じっとしていらっしゃるの」

「ははあ」

半之助はわざと眉をしかめた。

「――それはつまり、亡霊が出る、というわけですね」

「そんなふうにお聞きになってもいけないの、乙女がこう云ったら、そうかといって黙って、そのとおりにしていらっしゃるの、今夜ばかりじゃなく、ほかにもそういうことがいろいろあるけれど、それはそのときそのときに、此処はこれこれ、なにはこれこれとお教えするわ、そうしたら云うとおりになさればいいのよ、わかったでしょ」