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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

メフィストめいた上品な顔が、ニヤリと笑った。

殿村は、それを聞くと、いよいよ好奇心がつのってきた。この老人はほんとうに五十万円のねうちのある不思議なものを見せようとしているのか。それとも、粋人の座興か。あるいは、悪質の詐欺か。いずれにしても、誘いに乗ってみるねうちはある。

「それじゃあ、女たちは帰してもいい。しかし、金は今夜はまにあわないが……」

「わかってます。わかってます。ほんとうにそこへ行くのは、あすのことです。それまでに、よくご相談をしなければなりません。あなたも、内容も聞かないで五十万円は投げ出さないでしょうからね。これからそのご相談がしたいのですよ」

「どこで?」

「静かな別室のあるバーがあります。すぐ近くです。そこへご案内しましょう」

影男の殿村は、この不思議な老人に深い興味を感じたので、いうがままに、女たちを引きとらせ、老人について銀座裏の小さなバーにはいり、奥の狭い別室に対座した。酒を命じておいて、老人はひそひそと話しはじめる。

「これは絶対に秘密ですよ。わかりましたか。わしは、三日というもの、あんたのあとをつけて、じゅうぶん観察した。