轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

「前金ではありません。先方に着いてから、引きかえでよろしい。これは先方の主人の収入で、わしはこのうちのごく一部をもらうだけですからね」

ふたりは老人が用意してきた自動車に乗った。運転手は老人の仲間のものらしく感じられた。四十分ほど走って、目的地についた。コンクリートべいでかこまれた、ひどく大きな屋敷の門前であった。老人はカギを出して、唐草模様の古風な鋳物の鉄のとびらをひらいて、殿村を門内へ案内した。

すぐ目の前に、大きな建物が黒くそびえていたが、どこか裏手のほうに、ぼんやりあかりがついているだけで、どの窓もまっくらであった。

「もとはりっぱな住宅だったが、いまでは荒れはてて、ある会社の倉庫に使われているのです。その番人の老人夫婦が、この広い家に、ただふたり住んでいるだけです。だが、わたしたちはこの家には用はありません。裏に池があるのです。その池の中へはいるのですよ」

老人はそんなことをささやきながら、先に立って歩いていく。

「池の中へはいるとは?」

殿村がおどろいてたずねると、老人はかすかに笑い声をたてて、

「いや、水の中へはいるのではありません。いまにわかりますよ」