轻松读懂日语经典作品
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
小さな円形建物の中に、どうしてそんな大戦場が実現するのか。それには、パノラマ発明者の巧緻なまやかしがあるのです。この光景のバックは円形建物の壁です。そこに真に迫った油絵の風景を描くのです。地平線から上の空は、建物の丸天井につらなり、そこにも青空と雲とが描かれています。見物は、場内のどちらを向いても、地平線がつづいています。そして、頭の上には無限に見える大空がひろがっているのです。
そのころはまだ電灯照明を使うことがむずかしかったので、建物の天井にあかりとりの窓をあけなければなりません。そのあかりとりのガラス窓を隠すために、見物席のすぐ上に、笠のような小屋根を作ったものです。見物にその小屋根の上は見えませんので、建物のドームの空を、少しの裂けめもない真実の大空と錯覚しました。
戦場の数千人の軍人たちのうち、何十かが実物大の生き人形でした。生き人形というのも、今では見られなくなりましたが、明治時代にはそれの名人がいたそうです。キリの木に細かい彫刻をして、胡粉を塗り、みがきをかけて、人はだそっくりの人形を作ったのです。ですから、パノラマ館の人物どもは、ほんとうに生きているように見えたのです。