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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

影男もポケットからそれを出して見せた。まったく同形のコルトである。

「ふふん、さすがですね。二五口径のコルトでしょう。すっかり同じだ。握りに馬のはねてる模様が浮き彫りになってますね。どれ、見せてごらんなさい」

お互いに取り替えっこをして、見比べたが、すっかり同じ型のピストルであることがわかった。

「というわけですな」

影男も笑い返した。

「そこで、凶器でも五分五分というわけですね」

「実に公平です。撃ち合えば、どちらが早く火を吹くかだが、すばやさではひけはとりませんよ」

「では、こんなものは、ポケットに収めておきましょう。きょうは決闘をやりに来たのではありませんからね」

ふたりはお互いのピストルを取り返して、もとのポケットに入れた。

「ところで、きょうは、また一つ、あなたの知恵が借りたいのですがね。このまえの『底なし沼』のトリックは実にすばらしかった。もう一度だけ、ああいうのを考えていただきたいのですよ」

小男の須原が、ごきげんとりのねこなで声でいった。

「それはわかってますよ。そのほかに用事があるはずはない。しかしね、ぼくはこのまえの底なし沼で懲りたのです。