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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

須原は懐中電灯を点じて、死体に近づいていったが、電灯の丸い光があおむきに倒れた影男の顔を照らすと、思わず、「ウーッ」とうなって、あとずさりした。ピストルのたまは顔面に当たって、顔一面がどろどろした赤い液体でおおわれていたからだ。

しばらくためらっていたが、光を顔に当てないようにして、また近づいていった。そして、死体のそばにしゃがんで、胸に手を当ててみた。鼓動はとまっていた。念のために右の手くびをおさえてみたが、そこにも脈はまったくなかった。

「あっけないもんだなあ。さすがの悪党も、これでお陀仏か。ウフフフ、じゃあ、これからきみのおさしずに従って、絶対に処罰されない手段にとりかかることにするよ」

須原は死体はそのままにしておいて、おもやに引き返し、どこかへ電話をかけた。そして、勝手元から一枚のござを捜し出すと、それを持って、林の中へはいっていった。死体を動かすまでそれをかぶせて、おおい隠しておくためである。

それから十分ほどして、ひとりの男がおもやの玄関へはいってきた。殺人会社の重役のひとりが、近くに待機して、須原の電話を待っていたのだ。その男は四十ぐらいの、やせて背の高い男で、わざと労働者のような服装をしていた。