轻松读懂日语经典作品
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
十二の娘の、かわいいかわいい娘の、花の売り上げをちょろまかして飲むんだ。おっかあも娘も食うものがねえ。飢え死にしそうなんだ」
泥酔のぼろ男は、そこで一段声をはりあげて叫びだした。
「そこいらのみんな、聞いてくれ。人外というものを知っているか。ここにいるおれがその人外だ。人間の形をして人間でない化けもののことだ。肺病やみのおっかあが飢え死にしそうになっている。十二の花売り娘がひもじがって、ぶっ倒れている。そのかわりに、おれがこうして、酒を飲んでるんだ。ちくしょうッ、人外だッ。人外っていうなあ、おれのこった!」
男はからになった焼酎のコップを卓上にたたきつけ、たたきつけて、こなごなに割ってしまった。そして、その鋭いガラスのかけらの上を、握りこぶしで「こんちくしょう、こんちくしょう」となぐりつづけた。無数のガラスの破片が手の甲に刺さって、針ネズミのようになり、タラタラと血が流れた。
突然、なんともいえぬ不思議な音が起こった。けだものの遠ぼえのようでもあった。生まれたばかりの赤んぼうの泣き声のようでもあった。酒場の客たちの顔が、みんなこちらを見つめていた。