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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
で、ほかのふたりの重役は、それを知っているのか」
「符丁電話で知らせておきました。おふたりさんは、もう今ごろは安全地帯へ逃げ出していますぜ」
須原は腕組みをしてだまりこんでしまった。
運転手も正面を向いて自動車の速度を増した。
「よし、この辺でとめろ。きみは降りて、ちょっとうちの近くを見てきてくれ」
六本木にはいると、須原がさしずを与えた。運転手は車をとめて、ひとりで降りていったが、しばらくすると、しんけんな顔つきになって帰ってきた。
「いけません。うちの裏表に、五、六人はりこんでいやあがる。刑事かどうかわかりませんが、とにかく、われわれの帰るのを待ち伏せしているのはたしかですよ」
「そうか。それじゃ、品川の事務所へやれ。御殿山の家だ」
車はふたたび走りだした。御殿山にも殺人会社の事務所があるものとみえる。事務所というのは、つまりかれらの隠れ家なのだが、この調子では、そういう隠れ家をほうぼうに持っているらしい。それほどの用意がなくては、殺人会社などというだいそれた事業はできないのであろう。
御殿山の近くまで走ると、また車をとめて、運転手だけが物見に出かけていったが、まもなく、顔色をかえて走りもどってきた。