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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

ここのうちの門をはいってから、小林はそっとトランクから抜け出して、近くの電話で、警視庁の中村警部に場所を知らせた。中村君は部下をつれて、このうちに駆けつけ、へいのまわりに待機していた。

一方、ぼくは地底世界で、ちょっと荒療治をやった。さっき、しばらくのあいだ、ぼくはきみたちのそばを離れたね。きみたちが艶樹と艶獣を観賞しているあいだに、ぼくはひと仕事やったのだ。

きみたちに気づかれぬように、もとの道を引き返して、入り口に近い事務室で、主人のちょびひげを手ごめにしてどろを吐かせた。地底世界の様子が、あらましわかった。ここには八人の男が使われていた。その八人を、次々と事務室に呼んで、次々と縛り上げてしまったのだ。ぼくはこう見えても腕力に自信がある。ひとりとひとりなら、どんな猛者にもひけをとるものじゃない。

それから、ちょびひげを脅迫して、池のシリンダーを浮き上がらせ、待機していた十人の警官を地底世界に引き入れた。そして、八人の男の黒ビロードをぬがせて、中村警部と七人の部下にそれを着せた。この艶樹の森へ黒衣の警官が侵入してきたのは、そういうしだいなのさ。