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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

もし罪があるとすれば、無届け営業ぐらいのものだとおもいますがね」

「たぶん、たいした罪にはならないだろう。しかし、いちおう取り調べられることは、まぬがれまいよ。きみが少しも悪事を働いていないかどうかは、調べてみなければわからないのだからね」

だが、ちょびひげは、「恋人誘拐引き受け業者」なのだ。「殺人請負業」ほどではないにしても、けっして刑罰をのがれられるものではない。

なわをとかれたちょびひげは明智につき添われながら、急なのぼり坂の岩のトンネルを幾曲がりして、いわゆる機械室についた。

大きな歯車がかみあって、太い心棒にワイヤーがまきついている。どこかエレベーターの機械に似た装置である。一方には、たくさんのスイッチのついた配電盤がある。そのスイッチの操作をしていればよいのらしい。

機械室の外は、床一面に厚ガラス板がはってある。ところどころ継ぎめがあるけれど、その一枚一枚が六尺四方もあるような大きなガラス板だ。

「この下に、この世の果てがあるのですよ。ほら、あすこに二尺四方ほどの透き通ったところがあるでしょう。あすこから、下の世界が見えるのです。このガラスはね、下側は一面の鏡ですが、あの透いて見えるところだけ、上からのぞけるようになっているのですよ。