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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

春木夫人っていうのよ。団員は十五、六人らしいわ。みんなお金持ちの猟奇マダムよ。はじめは競馬の仲間だったらしいのね。それがマージャンやトランプのパーティーをひらいているうちに、だんだん秘密の楽しみにふけりだしたわけよ。いまではほんものの秘密結社だわ。みんな黒いガウンを着て、黒い覆面ずきんをかぶって、そのために借り入れてある秘密の家で密会するのよ。そして、悪事をたくらむのだわ」

「たとえば?」

「不倫のエロ遊びよ。ずいぶん思いきったことをやっているらしいわ」

「それじゃきみは会員じゃないんだね」

「どういたしまして。地位と財産がなくっちゃあ、その結社にははいれないのよ。それでね、十万円の値うちっていうのは、その会合の場所と時間だわ。どう? 買ってくれる?」

鮎沢は無言でポケットから小切手帳をとり出し、十万円の金額を書きこんで捺印した。それを相手に手渡しながら、

「で、その場所と時間」

「代々木の原っぱの中の一軒家。広い地下室があるんですって。団員はガウンの上にオーバーを着ていって、門の前でオーバーをぬぎ、覆面をかぶるのよ。そして、門に番をしている人にサインをすると、入れてくれるんです。