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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
これは公許の『人間狩り』です。昔の暴君は、罪人を無人の島に放ち、時間を限って、かれが島のジャングルに隠れ、追っ手の包囲を巧みにまぬがれることができたら無罪放免するという、一種の競技的スリルを考え出したものです。罪人は死か放免かのせとぎわに立ち、限られた時間中、息も絶えだえに逃げまわる。それを狩猟する暴君の家来たち。この『人間狩り』のスリルは、闘牛などの遠く及ぶところではありません。
しかし、今夜の『闘人』は、そういう大がかりな『人間狩り』ではありません。ひとりとひとりの戦いです。牛と人間ではなくて、人間と人間なのです。グローブをはめない拳闘、それにレスリング、角力、柔道、どんな手を用いても反則ではありません。一方がまったく闘志を失って、ふたたび立つことができなくなるまでの戦いです。
この闘人の優勝者には、二十万円の賞金が与えられます。また、皆さまもどちらかの闘士に賭けをなさることができます。つまり、青春の肉弾相うつ闘争と、賭けの勝負との二重のスリルを味わおうというわけです。
では、闘士をご紹介します」
これがおそらく団長の春木夫人であろう。解説を終わって片手で合い図をすると、地下室の入り口の近くにいた当番幹事とおぼしきひとりが、ドアをひらいた。