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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

あなたに話せば、世界じゅうで四人だけが知っていることになります。もし、これっぽっちでも漏らせば、その人の命はたちどころに失われます。わかりましたか」

表のほうで電蓄が音楽をやっているので、須原のボソボソ声は、春泥にさえ聞きとりにくいほどであった。

「秘密結社のたぐいですね」

「まあそうです。しかし、結社といわないで、会社といっております。また、思想的な組合でもありません。実は、営利会社なのです。むろん、登録した会社ではありません。営利を目的とするものですから、まあかってに会社と呼んでいるわけです。その会社の名をいえば、秘密のほとんど全部がわかってしまいます。それが最大の秘密なのです。しかし、こうしてお呼びたてした以上、それをいわなければ、お話ができません。あなたは犯罪小説家ですから、たいして驚かれることもないでしょうが、気をおちつけて聞いてください」

須原はそこでぐっと前にからだをのり出して、春泥の耳に口をつけんばかりにしてささやいた。

「殺人請負会社です」

かれの口は異様に大きかった。青白い顔にくちびるだけがまっかだった。この青白さは病身のせいではなく、生まれながらの殺人者の相貌なのであろう。