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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

巨勢博士は愛想よくニコニコと返事の代りに笑ってうなずいたが、実は何か他のことに考えふけっているようである。

「四時九分の始発にのると、東京へ何時ごろつきますか」

「七時半ごろです」

「第三国人か。滝沢三次郎氏も、そう言いましたな。第三国人。どうも世話がやけますよ」

巨勢博士はニヤニヤしながら呟いたが何か考えふけっているのだ。

「なんだい。博士は何を考えているのだい。龍教殺人事件かね」

「いえ、ボクの考えているのは、ピストルのことですよ。ピストルはいずこにありや。アハハ。バカの一念という奴ですよ」

そこへ蛸重がつれられてきた。

さっそく訊問がはじめられた。

「御足労をかけて済まなかったな。ツカミ屁をかまされるのは覚悟しているが、お手やわらかに頼むぜ」

「イヤア。サイソクは恐れいります」

蛸重は相好をくずしたが、

「そう仰有られると、今日はやめておきますよ。どうも警察の中というものは、どこへ行っても同じものだ。しかし、なつかしいものじゃないですな。私たちの方じゃ巡査をやめることを、足を洗う、と云いましたが、植民地は柄が悪いせいかね」

「イヤ、そのことだよ。今日はお前に教えてもらいたいことがあるのだよ。