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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

相当明確な疑惑の対象を持っているように見うけられる。

大矢警部はわざと、くだけて

「どうにも、我々は五里霧中なんですよ。腹蔵ない御意見をきかせて下さい」

美津子は首をふって、

「わかりませんわ。私の推理は、それで全部なんです」

それ以上は語らない覚悟がハッキリくみとれた。

大矢警部は話題をかえて、

「この家に、足の裏にタツノオトシゴのようなホリモノをした人物がいないでしょうか」

美津子は呆気にとられて、

「足の裏のホリモノ?」

「ええ、そうなんです。まことに奇怪な話ですが、足の裏にタツノオトシゴのようなホリモノをした人物がいなければならないのですよ」

「タツノオトシゴ?」

「ハッハッハ。まったく妙な話ですよ。すくなくとも一人。あるいは、数人」

「人の足の裏なんて、見る機会がありませんもの」

「まったく、そうですよ。それで我々も困っています。さて、それでは昭和十七年のことを思いだしていたゞきたいのですが、当時お嬢さんは、おいくつでしたか」

「十七」

「あの晩のことで、何か変ったことを記憶しておられませんか」

「あの日のことは、かなりハッキリ覚えています。忘れようにも、忘れられない日ですから。