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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

この先生は、カルモチンの錠剤を熱湯で溶かして飲んだんですよ。粉末だと、この場合によほど近くなっているから、これは多いに危険です。あのお嬢さんは、どのぐらい飲んでいましたか」

「事件の翌々日でしたか、院長にお目にかかった時に、二十グラムぐらい、あるいは四五十グラム飲んだかも知れないという話でした。生き返ったのは運がよかったとのことでしたよ」

「それは、たしかに、ひどい。それだけ飲んだら、死ぬのが自然だ。粉末だからな。しかし、ずいぶん、のんだものですね」

「スプーンで、どれぐらいの量ですか」

と、私がきいた。

「二〇グラムというと、スプーンで一山ありますかな。一杯のココアに、それぐらい飲んだのでしょう。美津子さんは、一杯ごとに、スプーンに三つぐらいずつお砂糖をいれる習慣だと云ってましたね。あの砂糖壺の状態だと、間が悪ければ、一杯のココアに、スプーン三つの量で、四五十グラムの催眠薬を入れる怖れがありましたね。ひょッとすると、まるまる催眠薬だけ入れることになる怖れもありました。砂糖と催眠薬と入りまじらずに半分ぐらい、ゴッソリ催眠薬でしたからね。美津子さんの場合が自然で、倉田さんと、由子未亡人が小量しか飲んでないのが、却ってフシギな程なんですよ」