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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

意外きわまる話だ。

八雲医師が容疑者を想像している理由も、そこにあるのかも知れない。しかし、彼は温厚そのもので、およそ特定の個人に不利なことを、不利にするために話すことを極度に避けているようであった。まことに、警察に関係する人とも見えず、非探偵型であったが、案外、警察に関係している素人だから、そうなるのかも知れない。人柄のよい慎重な紳士であった。

「それは重大なことを暗示しているようですなア」

大矢捜査主任はかなり亢奮したらしく、腕をくんで緊張の面持であった。

「イヤ、私のはね。ティネイに検査したわけではないのですよ。しかし催眠薬は年中手がけていますから、一目見てハッとして、かなりシサイに眺めたのです。素人の見た目には、まるで砂糖と変りません。特にアチラの砂糖とは、ね。しかし、よく見れば分ります。まったくゴッソリ入れてありましたよ。あの砂糖壺の報告はきていませんか」

「砂糖壺とココアの飲み残りは目下検査を依頼中です。検査を依頼しにでかけた刑事の話では、専門の学者が一目見て、これは半分催眠薬みたいなものだ、と云ったそうです。やっぱり、ブロバリンとか、カルモチンとか、そんなものだろう、と一目で断定したそうです。