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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

「あとの三人が眠っている、か。フム。どこかで、読んだね。ヴァン・ダイン。甲虫殺人事件」

「ホホウ。お前は学があるな」

大矢捜査主任は、まさしく一本とられた顔で重吉を見上げた。

「お前は探偵小説を読んでいるのか」

「イヤ、おはずかしい」

彼はニヤリと笑ったが、

「ここのウチでは、上は旦那より下は下男女中に至るまで、探偵小説を読んでまさアね。どの部屋の本棚を探しても、探偵小説がころがってまさ。私も昔は朝鮮で巡査を拝命致しておりまして」

と、蛸は又、ブッと屁をたれて、ニヤニヤした。

「巡査は何年つとめたね」

「イエ、もう名ばかりのことですから、ほッといて下さいな。植民地でもなきゃ、私が巡査なんか、つとまりますかい」

「甲虫殺人事件かねえ。なるほど、犯人は由之氏かね」

蛸重は答えなかった。みんなを見廻して、ニヤニヤした。そして、また、ブッと屁をたれた。

「お前のオカミサンの説によっても、そうなるらしいね。お前のオカミサンは、人殺しをきいて、テッキリ犯人は安彦君ときめこんだぜ。安彦氏は恋のウラミによって兄を殺し、又、父を殺すコンタンもあったというじゃないか。え?」

「アッハッハ」