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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页

青空文庫

――する事はもうわれらはしたのだ! しかし、いずれにせよ、今がわかれ、せめて声なと聞きおきたい、各※(二の字点、1-2-22)、わしの前へ来て名を名乗り、それを永別として散ろうぞ――」

「はっ……」

しばらく、誰も声を出さなかったが、もう丘に近い河原地まで、敵と、少数の味方との声や打物の喚きが聞えて来たので、刑部は、

「猶予すな」

と、叱った。

四、五十名の家臣たちは、各※(二の字点、1-2-22)平常の役名と姓を名乗って、それを別れに、槍を把って、丘から敵の中へ駈け去った。――刑部が名も知らない厩の口取の小者までが、名乗って去った。

「……もうそれだけか」

「五助だけがお付添い申しておりまする」

「うむ、そちはまだいてくれい」

と、冥想するように、輿の中に俯向いて、何を思ったのか、刑部はにやりと笑った。――功利に動き、功利のために節を売り、功利のために戦っている無数の叫喚を、愍れむもののように、皮肉な微笑をたたえているのだった。

「――よかった。治部は、どこまでもわしの善友じゃった。この体で、こういう折もなく生き永らえていても、精々あと五年か十年。……わしはすることをした。