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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页
――ところで、そういうお上と下のあいだに立っているのは誰だ? 武士というもの達だ――この際、武士のすることは何か?)
それを痛切に彼は考える。
(打開と云っても、御制度の中での打開だ。津軽領以外へ何の策も施す途はない。自己の持つ土の上に打開を求めるほかないではないか。――また武士は、自己の為すことを、自己の分の中から、今こそ求め探して、奉公にさし出す時ではないか。――元和、寛永の武士道をそのまま習慣にして、刀にかけてものをいうだけが士道だと心得ている時機ではなかろうが)
結論において、彼はこう極めている。
(世の中は、生きてゆく。殖えてゆく、進んでゆく。粗衣粗食の御節約も結構だが、絶対に、消極策というものは、どんな飢饉の地でも適合しない。つまりこの世の中というものの本質に適合しない)
それから彼は覚悟を極めた。
(鬼になれ。――鬼になってやらねば出来ない!)
お珠が見ても、父の人相がこの頃変って来たと思う。土や水と闘うので、気はあらく猛々しくなった。
仕事場に出る時の身支度を見ても、厳しさと云ったらない。晒布の襦袢だけは毎日洗ったものを着せてくれとお珠へ云ったのでも分る。