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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页
あとは、おまえ達自身を欣べ」
弱い息づかいが炎のように急いて来た。
「人をさんざん鞭打ったわしは、最後に、その鞭を自分へ打つ日が来た。……当りまえなことだ。……済まなかったのうみんな、わしは泣きながらおまえ達の子や親を鞭で打って来たが、謝るぞ……謝るぞ……わしの為にしたのじゃない、勘弁してくれい」
それで、彼の気持は尽したらしかったが、まだ、微かに何か悶えていたと思うと、膝の下から一通の遺書を出して、
「お珠……お珠……」と、二度云った。
彼女が、やっと答えると、その遺書を手に握らせて、
「これを持って、おまえは、安太郎殿のところへ使いにゆけ。……ここにいる村々の年寄に連れて行ってもらうがいい……。よいか、おまえには、ただ、こ、これだ……」
血しおの手から、その遺書をポロリと落して、わが娘へ掌を合せると、がくりっと棟方与右衛門はそのままとなった。
遺書の宛名は、十川安太郎父子殿――
お殊と安太郎の婚礼の式は、与右衛門の喪中であるに拘らず、その秋、新田一万石の初刈入れが済むとすぐ、大きな民衆の力で執り行われ、三日三晩、真実そのものの慶賀を送られた。