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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页

青空文庫

――へい、旦那もたしか――そのころはまだお若かったが、蓮田様や関様などと、四、五度もおいで下すったはずでございます。……ところが、それから間もなく、桜田の騒動じゃございませんか、瓦版を買ってみると、よく冗戯ばかりいっていらした佐野竹之介様だとか、お気さくな黒沢忠三郎様だとか、お馴じみのお方の名が何人も見えるんで、瓦版を仏壇に上げて拝んだものでございます。……その中に、忘れもしねえ、海後磋磯之介と、旦那の名も、十七名のうちに、立派に載っていたと思ったが、どうして今日まで御無事に……」

「これっ、おい、何をいっちょるか、何を……」

旗岡巡査は、まるで、持っている棒みたいな表情で、

「わしには、何のことか、わけが分らんが……」

「……へえ? そうでしょうか」

「人違いじゃろ」

「でも……? ……おかしいなあ。見れば見るほど似ていらっしゃるが」

「大福餅一つくれんか、そんなことより」

「へい。こちらへお掛けなすって」

と親爺は番茶を注いで、

「旦那、あっしも江戸の人間ですぜ。――いって悪いことなら死んだって、口を割りゃあしません。……ほんとに海後磋磯之介様じゃねえですか」