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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

やがて皆さんに分る時が来るだろう。

第三は、忠実なる一人の従者を傭入れ、色々復讐事業の手伝いをさせることであったが、これは到着早々、ホテルの支配人の世話で、恰好のものを手に入れることが出来た。志村という元刑事巡査を勤めたこともある三十男で、使って見ると、極正直な上に、仲々探偵的手腕もあって、実に適当な助手であった。

無論志村にわしの身の上や復讐のことを打開けはしなかった。わしは非常な変り者で、理解し難い命令を下す様なこともあろうが、それを少しも反問せず、唯々諾々として遵奉するという約束で、その代り給金は世間並の倍額を与えることにした。

志村を傭入れて一週間もすると、わしは彼を大阪へやって、奇妙な品物を買求めさせた。当時日本に幾つという程珍らしかった実物幻燈機械――皆さん御存知じゃろう、生きて動いている蜘蛛なら蜘蛛が、そのままの色彩で、畳一畳敷程の大きさに写る、あの不気味な幻燈機械だ。もう一つは、大きなガラス壜の中にアルコール漬になっている、嬰児の死体――どこの病院にもある、解剖学の標本だ。一体全体、何の目的でそんな不気味な品々を買い求めたか。皆さん、試みに推量してごらんなさい。