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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
機会に、その事を川村に知らしめ、彼奴を絶望のドン底につき落してやること。
無論これは、わしの復讐事業の最後の目的でなく、ちょっとした前芸に過ぎないのだが、その前芸丈けでも、わしの蒙ったと同じ、或はそれ以上の心の痛手を、川村に負わせてやることが出来るというものだ。
さて、Y温泉の別荘で、あの恐ろしい発見をしてから、一週間ばかりは別段のこともなく過去った。無論その間に、川村義雄が、数回訪ねて来て、わし達の間柄は計画通り段々うち解けて行ったのだが、彼はわしの顔を見る度に、大牟田瑠璃子の伝言を伝え、さも自慢げに彼女の美しさを褒めたたえるのであった。
「夫人はあなたからの贈物を大変喜んで、近日中是非御礼に伺うけれど、呉々もよろしく申上げてくれという事でした。それから、夫人はあなたの方からも、どうかお訪ね下さる様にと、繰返し伝言を頼まれているのです。どうですか、一度大牟田家をお訪ねになっては」
川村が勧めるのを、わしは首を振って、
「イヤ、その内お訪ねしますよ。敏清こそ懐かしいが、瑠璃子夫人は全く知らぬ人ですからね。それに、わしはこの年をして、妙にはにかみ屋で、婦人の前へ出ることを余り好みませんじゃ。