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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

三人は思い思いにソファや肘掛椅子に腰を卸して、お茶を啜りながら、よも山の話を始めた。

瑠璃子は、やがて子爵家の跡目相続をした近親のものが邸へ乗り込んで来ること、そうなれば親族会議の結果定められたあてがい扶持で別邸に住まねばならぬこと、それにつけても、あなたは子爵家の遠い縁者に当るのだから、何分のお力添えが願い度いなどと、しんみりした打開話さえしたものだ。高価なわしの贈物が、よくよく彼女の心を捉えたものと見える。

それにしても、おかしいのは、あの慾ばりの瑠璃子が、恋の為とは云え、子爵家の財産を棒に振ってしまったヘマなやり口だ。わしを殺す前になぜ相続者を産んで置かなかったのだ。そこへ気のつかぬ女でもあるまいに。

イヤ、産むことは産んだ。川村との間の隠し子を産んだ。併し、流石の姦夫姦婦も大手違いをやって、わしの病気入院中に子供を拵えてしまったものだから、如何に図々しい彼等でも、それをわしの種だと云いくるめる術はなく、全身の腫物という奇想天外の口実を作って、やっとわしの目を逃れ、Y温泉の別荘でその子を産み落した。そして殺してしまった。何も殺さなくても、外に手段もあったろうが、そこは鬼の様な姦夫姦婦のことだ。