轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
死んだ大牟田が、瑠璃子さんを探し出した時の喜び様というものは、それは大変でしたが、今こそ、僕は彼の気持が分りますよ。日本一の美人を誰はばからず独占する嬉しさというものが、ハッキリ分りますよ。だが、それも今迄の様な貧乏絵描きではどうすることも出来なかったのです。全く伯父のお蔭です。伯父の財産のお蔭です」
悪人も痴情の為にはこんなになるものか。子供の様に喜んでいる。だが、この無邪気な美しい青年が、二度も人殺しの大罪を犯したのかと思うと、ゾッとしないではいられぬ。恋の前にはあの恐ろしい旧悪も気がかりにはならぬのか。イヤイヤ、こいつは人殺しなど旧悪とも思わぬ、稀代の大悪人だ。生れついた殺人鬼だ。この美しい肉体の中に、まるで常人と違った毒血が流れているのだ。人間ではないのだ。一匹の美しいけだものなのだ。人殺しを罪とも思わぬけだものなのだ。
彼は今、瑠璃子と結婚した時の大牟田の気持が分ると云った。如何にもそうだろう。けだものとて、痴情に変りはない筈だ。
皆さん、姦夫は今有頂天になって喜んでいる。幸福の絶頂に微笑んでいる。これがわしの思う壺なのだ。彼奴を真から思い知らせてやる為には、一度幸福の絶頂に押し上げて置いて、それから奈落の底へつき落してやるのでなくては効果がないではないか。