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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
わしも行って、看病しようと云うと、瑠璃子は、毎日一緒にいて顔を見られるのがいやだと、頑強に反対するので、仕方なく、彼女の里から連れて来ている、忠義者の婆やをつけてやることに決めた。
何ということであろう。その腫物があと方もなく全快するのに、殆ど半年もかかったのだ。あの社交好きの瑠璃子が、その間、誰の訪問をも断り、ただ昔ものの婆や一人を話相手に、じっと辛抱していたというのは、よくよくの事である。
わしは、その長い間、愛しい妻と別居している淋しさに耐え兼ねて、度々Y温泉を訪ねたが、瑠璃子は一間にとじこもり、かたく襖をしめて、襖越しに、やっと話をしてくれるばかりで、醜くなった顔を極度に恥て、どうしても会ってはくれなかった。
その中で、まだしも仕合せであったのは、彼女が、名を偽ってではあったが、土地の医者に身体を見せてくれたことだ。わしは、早速その住田という医学士を訪ねて様子を聞いて見ると、別に悪い病ではないが、仲々頑強な腫物だから、気永に治す外はない。それには、薬よりも、ここの温泉が非常に有効だとの答えであった。皆さん、この住田医学士の名をよく覚て置いて下さい。