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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

「フフフフフ、怖いのか」

「ウウン、怖いものか。だが、知り度いのだ。俺の運命が知り度いのだ」

「教えてやる。だが、後悔するな」

川村は言葉もなく、ブルッと身震いした。

「上だ。上を見るのだ。フフフフフフ、何をグズグズしている。見る勇気がないのか」

彼はいじけた子供の様に上目使いをして、ソッと天井を眺めた。だが、平な鼠色の天井板には、何の変った所も見えぬ。

「そんな見方では駄目だ。もっとじっと見ているのだ」

川村は云われるままに、再び天井を見上げた。長い間見つめていた。併し、血迷った彼の目には何も映らぬ。ただ一面の鼠色だ。天井には、真中から一本の電線が垂れて、その先には、はだか電球がぶら下っているばかりだ。

「フフフフフフ、何を見ているのだ。天井に穴でもあいていると思うのか。そんな小さなものじゃない。余り大き過ぎて、君は気がつかぬのだ。天井そのものを見給え。あれが一枚の板だとでも思っているのかね。どうしてどうして、あれは一間も厚味のある、コンクリートの塊りなんだよ。つまり、その部屋全体が一つのシリンダアなのさ。分ったかい。ホラ、さい前君の頭の上にあった電球が、もう君の目の辺まで下って来たじゃないか。