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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

しますとね、妙じゃありませんか、傭人も何もいなくなって、空家みたいに戸が締切ってあって、お隣で尋ねても、お引越しをなすったのかも知れませんなんて返事なんでしょう。何だか気掛りですわ」

「お前の仕打ちを恨んで、自殺でもしたんじゃないかと、心配しているんだね。安心おし、川村の居所は、実はわしがよく知っているよ。婚礼が済んだら、きっとあの男に逢わせて上げるよ」

「マア、ご存知ですの。どこにいらっしゃいますの。遠方ですの?」

「ウン、遠方と云えば遠方だけれど、ナニ逢おうと思えば訳はないのだよ。……だが、お前が気掛りだというのは、もっと別のことらしいね。云ってごらん。一体何をそんなに心配しているの?」

わしは、川村のことをこれ以上話していては危険だと思ったので、それとなく話題を変えた。瑠璃子もそれに乗って、彼女が一番気にしていることを思い出した。

「それは、あの、あたし、見せて頂き度いものがありますの」

「ホウ、見たいものだって? アア分った。いつか話した黄金の仏像かい」

「イイエ」

「じゃ、わしの持っている沢山の宝石が見たいのかい」

「イイエ」

瑠璃子は何故か云いにく相に、わしにばかり喋らせて、かぶりを振っている。