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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

さて、外に飛出して見て、わしは意外な気がした。棺の中から易々と飛び出し得たことが、已に不思議なのだ、若し土の中に埋めてあったら、仮令棺を破っても、上から土が落ちて来て、推しつぶされてしまう筈だ。変だぞ。それではわしの棺はまだ墓場に埋めないで、どこかに置いてあったのかしら。うまいうまい、わしはとうとう助かったのだ。このまま家へ帰りさえすればよいのだ。

だが、この暗さはどうしたものだ。まるで空気そのものを墨で染めた様に真暗だ。

待て待て、手さぐりで、大体様子が知れるだろうと、わしは盲目の様に、両手を一杯に伸ばして、さぐり足で歩き始めた。

壁がある。だが、何という粗雑な壁だろう。まるで石垣みたいだ。壁を伝って暫く行くと、ヒヤリと冷い鉄の板にぶつかった。さぐって見ると、どうやら扉らしい。非常に大きな、頑丈な扉だ。

変だぞ。わしは一体全体どこにいるのだろう。

アア、分った。わしは何という馬鹿な思い違いをしていたのだ。わしの家の墓場は、普通の土の中ではなくて、昨日もお話しした通り、その地方で「殿様の墓」と云われている、西洋風の石室だ。小山の中腹を掘って、石を積み重ね、漆喰で固めた、一種の穴蔵なのだ。