轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
わしは、目の前で、いきなり天地がひっくり返る様な驚愕にうたれた。三千世界にたよるものもない孤独と悲愁にうちのめされた。わしは殆ど思考力を失って、茫然と立ちつくしている外はなかった。
姦夫姦婦の私語は綿々として尽きなかった。聞くまいとしても、その一語一語が、毒の針の様にわしの鼓膜に突き刺さった。
「大牟田が死んでしまったのは嬉しいけれど、でもね、義ちゃん、あなた当分の間遠のかなければいけないわ。召使達の口から世間に知れては拙いから。ホホホホ、あたしまだ、旦那様の喪中なんですものね」
「フン、それはそうだね。その点では、大牟田が生きている方が仕易かったよ。あいつは他人を追払う二人の番人も同然で、我々の仲を自分も疑わず、知らず知らず他人にも疑わせぬ役目を勤めてくれたのだからね」
「ホホホホホホ、生ている間は、あんなに嫌っていた癖に……」
「無論、あいつがいない方がいいのさ。でなくて、地獄岩に仕掛けなんかするものかね。僕はあいつが君の唇から、絶えず接吻を盗んでいるかと思うと、どんなにいやな気持がしたか知れやしない」
アア、皆さん何という言い草であろう。この世がさかさまになったのか。