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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
今井は、金口のシガレットをくゆらせながら、ニコニコ村川に話しかけた。
「君とは、一度ゆっくり話したいと思っていたんだよ。でも、暇がなくってねぇ。」
「いや、私こそ一度ゆっくりお礼を申したいと思っていたのです。」
村川は学生時代もらっていた学資の礼をいった。
「いや、そんなお礼は一切ヌキにしようよ。僕は、そう思っているんだよ。僕のようなものが学資のない人達の面倒を見るのは、当然の義務だよ。またもらう方じゃ、だれからもらったってこれだけは恥にならないものだよ。お礼を改めていうにも当らないさ。君が、それで有為の人物になってくれさえすればいいのだ。将来も、僕の会社で働いてくれればけっこうだが、君が気に入らない場合はいつどこへ行ってくれてもいいんだよ。」
今井は、いかにも物のわかったような顔をしていった。
「いいえ。どういたしまして。」
村川は、少しくすぐったい気がしながら答えた。
車は、尾張町を過ぎ、歌舞伎座の前を通って、築地へ入って、二三町進むと、右側の家の前に止まった。
そこは、地震後浜町から築地へ越して来た有名な日本料理の家だった。
門から玄関までが、長く狭い敲土の道になっていた。