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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
「おこしなさいませ!」
女中が、三四人迎えた。
「電話をかけておいたはずだがね。」
宮田がいった。
「はい承知しています。先刻からお待ちしていました。」
三人は、狭い廊下を、三四度直角にまがった。一番奥の茶室風の六畳へ通された。
「おせまいことはございませんか。」
「いやけっこうだよ。」
宮田が、女中に答えた。
やがて、お茶やぬれ手拭が運ばれた。黒塗りの膳が、めいめいの前に運ばれた。
村川は、疲労と窮屈のほかは、何もなかった。ずり落ちそうになる眠気と、倭文子の上に京子がどんな魔手を弄しているだろうとの不安とが、かわりばんこに、彼を襲って来た。運ばれた料理に対して、少しの食欲さえなかった。
「さあ、村川君、君も一杯やりたまえ。さあ、お酌をしてあげてくれ!」
宮田が、女中にいったので、村川は仕方なく、杯をさし出した。
今井は杯を二三杯重ねると、前よりももっと機嫌がよくなって、村川に話しかけた。
「昨日、君の留守に川辺のお嬢さんが、君を訪ねて来たぜ。」
「あ、そうだそうですね。」
「君とは、よっぽど親しいのかねぇ。」
「いいえ。別に。」
「だが、一緒の家にいるのだから、よく顔を合すだろう。