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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
五秋はすっかり忘れていたことを思い出した。『そうでございましたね。――今日……すっかり忘れておりました、わたくし』」
五秋、紅蓼、ともにわたしの空想の人物である。手近にみ出すことの出来た二三人の人間をあつめ、それをわたしの空想に浸して、それぞれ都合よくでッち上げた存在である。が、この二人、十年まえの、よし、店は閉めたとしてもまだそこに、うそにも「上総屋」という名まえの残っていた底の、そうした古い、すぎ去った情景のなかにだったからこそ、自由にわたしに動かすことが出来たのだろうか? こうした会話を、忌憚なく勝手にとり交させることが出来たのだろうか? ――そうしたうたがいがふとわたしの胸を掠めた。
「そうじゃァない。――そんなことはない」
すぐにわたしは自分にいった。五秋も紅蓼もまだ生きている。震災が来ても、区画整理が出来ても「八百善」がなくなっても「道哲」が空地になっても、そうしてその「日本堤」が平坦になっても、この二人はなお生きている。――生きている以上、どこへでも出て来ていいわけである。――どこへだって、出て来ていけないというわけはないはずである。