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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「はい」

「そんなのは懲罰にふして、さっさと、当面の戦争をかたづけてしまえんものか」

「内争は禁物ですし、かえりみてもいられませぬ。かつ、吉野や金剛山の宮方を、絶滅するには、このさい、思いきり大量な兵を投じて、余りな長陣にはせぬご方針とも聞いております」

「それよ、長戦にするなとは、この高時が命じたのだ。戦はかなわん。遠くの戦でも、戦は好きでない。足らぬものはぜひないゆえ、出す兵はどしどし派して、はやく凱旋せよと申してやれ」

始終、つつましく、彼に近仕していた佐々木道誉は、高時が、小御所の座所にもどると、あらたまって、暇をねがった。――近江へお返し給わりたいといい出したものである。

「なに、近江へもどりたいと。この上、そちがいなくなっては、いとど淋しいぞ。なぜ急にさようなことを印し出るか」

「いま伺えば、出陣の御教書に接しても、雲行きをみて、容易に、腰をあげぬ大名も多いとか。譜代のご恩もわすれた嘆かわしき武門の廃れ、はや見ているにしのびません」

「では、出陣を望むのか」

「わが四ツ目結の旗を先に立て、そのような忘恩の大名どもへ、後日、悔いを噛むなと、言ってやりたいのでございまする」