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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《血煙天明陣(ちけむりてんめいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 頁

青空文庫

うちこわしの夜

一

と」

「申しましてござります」

「その百姓の凄じさ、わしは目前今はじめて見た。……牧野殿」

と遠江守へいった。

「百姓をあまり苦しめてはならぬ。彼らの要求入れておやりなされ」

顔蒼褪めた遠江守は、頷いて恭しく一揖した。

うちこわしの夜

一

百姓一揆が鎮まって、浅間山が小爆発をし、それの麓に建てられてあった、田沼の山屋敷が破壊し埋ずもれ、それを最後に降っていた灰も、爾来降らなくなってしまった。

もうこのころには田沼一行は、すでに江戸へ帰っていた。

やがて季節は秋となった。

江戸の秋のさわやかさ!

木犀、萩、水引、鶏頭が、次々に屋敷の庭に咲き、八百屋の店頭には八ツ頭、唐の芋の新鮮なのが現われたり、魚屋の盤台には落ち鮎、かますなどが、膏ののった体を横たえたりした。

幽蘭の分栽の行われる季節。

そう、季節はさわやかであったが、世相は決してさわやかではなく、江戸市中にはこの頃から、いわゆる「うちこわし」があちらこちらに、小規模ではあったが行われ、米屋、富豪が襲われた。

ある日貝十郎は屋敷を出て、市中の様子を見廻った。

(米相場も平価の五倍となっては、窮民たちはたまるまいよ)そんなことを心で思ったが、身分が与力であってみれば、市中に暴動を起こさせてはならないと、腹心の同心白須源吾、桐島伴作にもよく旨を含め、これまでずっと警戒さ