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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《血煙天明陣(ちけむりてんめいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 頁

青空文庫

六

上がり框から板張りで、巨大な炉が一つ切ってあり、釣るされてある薬罐の下では、薪が焔をあげていた。

「白須氏、貴殿は奥へ」

「は」

というと百姓爺――まことは貝十郎の腹心の同心、白須源吾は窓から離れた。

「十二神様、大丈夫で?」

「うん」といって頷いた。

間。源吾が立ち去って間。

と、入口から冬次郎が、ツカツカと土間へはいって来た。

六

「貝十郎、汝であったか! ふうむ、やっぱり汝であったか!」

何んとなく殺気立った気勢に驚き、啼き立つ家鶏の籠脇に立ち、冬次郎は烈しい叱咤の声で、

「本年一月十五日の夜、田沼屋敷をなつかしがり、立ち廻ったお浦ままごと狂女を、稲荷堀附近にて発見し、捕えんとせし時汝出でて、邪魔して逃がせしを手はじめに、先夜は先夜で再び邪魔をし、無礼! 余が手を十手にて挫き、捕えしお浦をまたも逃がしたな。それさえあるに今日は卑怯、我らが後を忍びやかに、尾行けさせ立ち聞きさせおったな! ……あらば申せ、いい訳あらば申せ!」

「何んのいい訳などありましょうや」

腰かけていた上がり框、そこから立った貝十郎は、貴人に対する礼は崩さず、慇懃に両手を膝に垂れながらも、儼として冒されぬ役人の態度、声も冷徹森厳にいった。