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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
そのころの小学校の先生は、その大ていが、学校以外、それぞれ自分のうちへ弟子をとって英語だの漢文だのの個人教授をしたものである。それをわれわれ「夜学」と呼んだ。――その「夜学」へ行くのに、だれも一旦うちへ帰って出直すのをあたりまえとしたが、ときによって学校の帰り、そのままそこへ弁当ばこをぶら下げたなり廻ってしまう場合もすくなくなかった。だからそれは事実において半ば「昼学」だった。……が、どこの夜学へ行く、どこの先生んとこの夜学へ行く、みんなわれわれ、すこしのうたがいもなくそういった。
その時分、香取先生、今戸に住んでいた。「ほんに田舎も真柴たく橋場今戸の朝けむり」の今戸である。――待乳山の下、今戸橋をわたって行くこと約半町、左っ側が八幡さまで大きな石の華表が立っている。その石の華表のすじむこうに、古い、格子づくりの、おんなしような恰好をした小さな平屋が二三げんならんでいた。そのとッつきの一けんが先生のうちだった。――その格子……わたしはその格子のたてつけのきわめてよくなかったことをおぼえている……をあけて入ると狭い土間の、すぐそのうえが煤ぼけ切った障子。