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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁
庸三は拒むこともできずに、やっぱり部屋を出て行った。燕楽軒の広い土間のホールヘ入ってみると、洋装の葉子が右側の窓下のところにいて、近づいて行く彼に気づくと、かつて見たこともないような愁いに充ちた顔をあげた。前側の椅子にかけると、彼女はヒステリックな表情で、
「ここでは話もできないの。出ましょう。」
と呟いて、あわただしくコオヒ代を払って起ちあがった。
町はラッシュアワアだったが、秋の侘びしい光線が一層この十字街を無秩序なものにしていた。葉子は一緒に歩くことをも憚るように、急いで向う側へ渉ると、そこでガタ車を一台呼び止め、彼の来るのを待ってドアをしめた。
少し走り出すと、彼女はくしゃくしゃの手巾を濡れた目から放して何か言おうとしたが、また顔を掩った。
「どうしたんだ。」
「私到頭清川さんに棄てられてしまったのよ。」
「ふうむ。」
庸三も声が喉元に閊えたようで、瞬間ちょっといやな感じだった。ひそかに予期していたことでもあったが、てこずった果てに投り出してしまった清川に同感はできても、投り出された葉子を今更咎めたり冷笑したりする気にはなれなかった。
「僕はまたあれから巧く行っていることとばかり思っていた。