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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「隠岐にいました。隠岐の配所の柵守をしておりました」

「ふうむ。誰の手について」

「塩冶殿のいとこ、富士名義綱と知りあい、その手づるで」

「それはここ一年のことだろう。それいぜんは何していたな?」

悪四郎は急にあたまを掻く。すると以前の悪冠者らしいツラだましいが、その薄笑いの底にチラとする。

「イヤ兄者人、そこをふかく訊かれると、なんともはや面目はございません。こうお顔向けもならなくなる」

「なにさ」

長年は打消して。

「いまさら糺明するわけではないよ。ものの順序として訊くのだ。誤解するな」

「まっすぐいってしまいます。郷里を出奔してから三、四年は都にいて、酒、ばくち、喧嘩の口きき、時には火つけ押込みまでやりましたが、或る時、恐ろしく強い相手に出会って、これこのとおり」

と、左の肩の狩衣を少しはだけて、古い刀傷の痕を、まざと灯下にさらして見せながら、

「死ぬ目に会ったのが、いい境目になりました。女とも別れて、ひとつえらい坊主にでもなろうかなんて思い立ちましてね」

「僧門に入ったのか」

「ところが寺を覗いてみたら、これまたばからしくて居られやしません。またぞろ諸国を流浪です。