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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「そうは、とらんのだ。ゆらいあのうすあばたは、この高時に心から馴じめぬらしい。過ぐる年の闘犬興行でも、大勢の中で、高時の愛犬に咬みつかれ、手くびに消えぬ犬の歯型をのこしたことを、当時、いたく恨んでいたそうな」

「でも、赤橋殿の妹君を娶え、いまは御一族でございますのに」

「それよ、その若夫婦を、祝うてくりょうと、華雲殿に招いてやったこともある。……ところが這奴め、大酒に食べ酔うて、田楽どもの烏天狗の姿を借り、この高時をしたたかな目にあわせおった。わしを華雲殿のただ中に投げおった」

妖霊星……ようれいぼし……。

そろそろ、藤夜叉の名も、出かねない。

道誉は懐紙を出して、咳をつつんだ。話をほかへ持ってゆく手段である。さし当って、高氏の病気とは、仮病かほんものか。それを高時の権力でつきとめさせたい。

「いかがなものでしょう」

道誉は、すすめた。

「ひとつ、太守からのお見舞をおつかわしになってみては。……さすれば仮病かほんものかは、明白ではございませぬか」

「いや、見舞の使いは、いくどかやっておるはずだ」

「公式にすぎますまい。さような儀礼一片でなく、太守のご心配ひとかたならずと、かくべつに」