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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

そして、宮はまもなく、その者たちを扈従に加えて、高野を去った。

それからの宮のお姿は、またもや雲か霞かのようで、その在るところは、どうもよくわかっていない。

しかし、以後の大和の宇智郡や南葛城地方には、しばしば、えたいの知れない郷軍の活躍が目だって来ている。

つまり正面の金剛山でない裏金剛にあたる所。――そこの紀伊見越え、行者杉越え、千早峠、久留野越え、高天越えなどの裏道をふさいでいる関東勢の陣を奇襲しては、たちまち雲霧のように消え去ッてしまう乱波(第五列)的な土軍の出没が近ごろになっていちじるしい。

おそらく、大塔ノ宮はいま、その中にあって、土寇作戦の指揮をとってでもいるのではないか。

そして、陰に千早の孤塁をたすけ、何とか突破口を見いだして、金剛山との合流をはかっておられるのではなかろうか。

×        ×

忍ノ大蔵は、正成と正季をまえに、以上、見聞のあらましを語り終った。

「よくしらせてくれた」

正成は、とじていた半眼をひらいて。

「大蔵、その上にまたさっそくだが、そちならではの急務がある。すぐ行ってくれまいか」

あくる日、大蔵はもう千早の内にいなかった。