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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「先陣の道をひらいたぞ」

「これは大仏陸奥守の軍」

「小笠原彦九郎の一手」

「千葉大介の一勢」

「敵のやぐら下へせまって、ここの一高地をわが手におさめた。つづいてこい、味方の衆」

と口々なさけびを、また、もっと大きな鬨の声にくるんでは、なんどとなく、谺を雲にくりかえしていた。

かねて、おびただしい人力と日数をかけて掘りすすめていた例の坑道を突破口として、蟻のごとく断崖の八、九合目へあらわれたものだった。

これはたしかに寄手の一成功にちがいなかった。

従来、どんな犠牲をはらっても近づきえなかった高さに達して、そこの小さい小台地を占領したことであるから、彼らが狂舞して誇ったのもむりはない。

たちまち、そのへんには、東国武者の旗じるしが、競うようにひるがえった。後日の軍功の証にもなることだった。そして一つの突破口をそこに見ると、谷にみちていたほかの軍勢もぞくぞく地下の蟻道をつづいて行った。いや、こうと見ては、ひとに功名を誇らせてはいられない。崖の地表もまた這いよじる兵の色で塗りつぶされた。ゆるやかに地面が逆に巻きのぼってゆくような錯視がおこる。――まさに千早の危機はいまかと見えた。