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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

と、これが採り上げられたものであったという。

変っている、ただそれだけの庭だろうか?

高氏は、やっと見つけた。いや彼の禅の師、疎石和尚の眼をかりてただちにうなずき得たのであった。

空

それをこの庭は提唱していた。

見るべきものの何一つ置いてないのは、人の心を空に直面させようための造庭者の深い図らいにちがいない。そう気がついたことだった。つまりこの庭は白紙なのだ。観る者の画くにまかせてある白紙の庭なのである。

とまれ高氏は膝の冷えもわすれていた。そのうちに静かな眸をうごかした。はるかな橋廊下を渡るとどろな足音がふと耳に入ったからである。きらやかな群臣の中に高時のすがたも見えてすぐ奥殿へ消えて行った。

「足利どの」

やっと、うしろに声がした。高時の側近のひとり桜田治部大夫だった。

「いざどうぞ、ご謁見の方へ」

「お取次、恐れいる」

「あなたこそ、ご病中とかを」

「いやさして大事でもございませぬ。して今しがた、お表から奥へお成りのようでしたがあれは?」

「お桟敷へ出て、佐々木道誉どのの御出勢にお見送りを与えられたのでございました。佐々木殿も今暁急なお沙汰を拝しまして」