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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「ほ。立たれましたか」

ほとんど無表情にちかい高氏のつぶやきだった。

つやつやしい直線の大廊下をつきあたると、そこから奥殿の階になる。左右の境の坪には、甲冑の衛兵がみえた。高時のいるところもいまは鎌倉大本営のかたちなのだ。

「足利か」

「はっ」

高氏は、台下に平伏した。

謁見の間いッぱい、ゆゆしい顔が居ながれていた。長崎円喜、金沢ノ大夫宗顕、佐介ノ前司宗直、小町の中務、秋田城ノ介、越後守有時、右馬ノ頭茂時、相模の高基、刈田式部、武蔵の左近将監など、ひと目に余る。

まん中が台座のお人だ。

その高時は久しぶりに見る高氏であり、高氏もまた、ここは不沙汰なここちであった。おととしは父を亡くし、去年の春にわたっては征地に暮れ、帰陣いらいは、病をとなえてひきこもったまま、今日にいたっていたのである。

だが。

その病中と称していた高氏の血色よりは、高時のほうがどう見ても顔いろが悪かった。白いといっても、こんにゃく色でつやがなく、お出額の下のかなつぼまなこも、かつてのような遊びをもたず、寝不足か、々と不気味な視線で、舐めずるように、高氏の姿をいつまでにらまえていた。